2010年5月23日日曜日

映画『人間ピラミッド』



1961年製作のフランス映画。
原題『La Pyramide humaine』。 
監督は映像人類学者として知られるジャン・ルーシュ。

地元の高校生の人種差別問題に気づいたルーシュは、この問題を主題に16ミリ映画を撮ることを思いついた。
1959年7月の夏休みを利用して撮影が始められ、無声で10時間分撮影された後、9月に仮編集された。
その後、年末のクリスマス休暇、翌年の復活祭休暇を利用して追加撮影が行われた。
最後の撮影はパリの撮影所に作られた教室のセットで既にパリで勉学中の5人に加え、アビジャンから5人の若者を呼び寄せて行われた。
16時間にのぼる撮影素材は、半年間の編集を経て、92分の映画作品となった。
なおコート・ジヴォワール共和国は1960年8月7日に独立、この映画はその後の1961年4月19日に公開された。

「この映画は黒人と白人の青年グループの中に作家が喚起した実験である」。

黒人のドニーズと白人のナディーヌは、ともにパリで学ぶ大学生だ。だが、彼らは一年前、コート・ジヴォワール自治共和国の首都アビジャンのココディ高校に通っていながら、互いに面識もなかった。
ジャン・ルーシュが、白人グループと黒人グループのそれぞれの最終学年の高校生たちと面談する。
アフリカに来たばかりの新入生ナディーヌが自己紹介する。彼女の目から見た同級生たち。素朴な彼女には人種差別問題が理解できない。
友情、恋、音楽、踊り、詩……。ナディーヌの編入によって、白人グループと黒人グループの交流が始まる。
ドニーズはナディーヌにアフリカの抱える政治問題への興味をもたせようとする。
誰とでも分け隔てなく接するナディーヌは異性の誤解を招く。
やがて映画の中の悲劇が生じ、白人グループと黒人グループはまた分離してしまう。
「映画の終わりがヴァカンスの終わりだ」。「映画は終わるが彼らの物語は終わらない」。


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この映画がすごい所は、一人一人の役割を俳優に与えること。
そして、コートジボワールでの人種差別問題を扱う事。
この2点を決め、
シチュエーションを作って、そのまま人間の動き、発言を記録していることである。

音楽も、アフリカ音楽、西洋音楽、ポップスという三種類を使っていて、
文化を保存する役割をしている。



実際の頭で構築した世界、話ではなく、
ある所、カメラの中の人が本気になって、
役を演じているのではなく、
役によって自分が変わったり、
そのままの自分が出てきたり、

自分って何なの?
コントロール不可能で、すごい人間の勢いが伝わってきた。

実際、ここでの白人(フランス人)と、黒人(コートジボワール人)は
映画に参加するまでは、お互いを軽蔑していたという。

しかし、彼等高校生が、人種差別の壁を越えて、友達になっていく
というストーリーのもと、
本当に友達になってしまったという。


映画が人を作ってしまったということ。


これは、歴史的にもすごいことだと思う。


何せ、この映画の直後にコートジボワールが独立したり、
この映画に参加した子が後に、大臣になったりしたというから、
この映画のおかげとは何もそんな根拠はないけれど、
少なからず関係があるはず。

それに、<グンベ>という地元のダンスパーティーで、
文明的優位者であるフランス人が、
身体とリズムを貴重にしたダンスの場では、たじたじになっていて
アフリカ的文明においては、劣等者となっていたところが印象に残った。


差別社会の実態を映した、すごい記録だと思う。


予想できないことに挑戦する監督がすごいと思う。
こういう風に即興的に作るってすごいなって思ったら、
監督、ジャン・ルーシュは
JAZZにすごく没頭した時期があったそう。

本当JAZZの即興みたいな作り方の映画だった。
とにかくどう動くか分からない人間のうつろいをキャプチャしているのが
とても面白かった。






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